《ヒエロニムス・ホルツシューアーの肖像》
青緑の背景から、銀色の髪と髭に縁どられた赤みのある顔が、まっすぐこちらを見すえる。目の輝きには周りの光が映り込み、眉間にはかすかなしわ。毛皮の襟の厚い衣が、がっしりした肩を包む。左上には名と年記が書き込まれている。
概要
《ヒエロニムス・ホルツシューアーの肖像》は、アルブレヒト・デューラーが1526年に描いた油彩の肖像画である。縦51センチ、横37.1センチのシナノキ(菩提樹)の板に描かれ、ベルリン絵画館が所蔵する。所蔵館によれば、デューラーの晩年の肖像画のなかでも最も重要な一点である。モデルのホルツシューアーはニュルンベルクの市政を担った有力な一族の出で、1499年に内参事会員、1500年に次席市長、1509年に首席市長となり、1514年には町の命運を託された高等参事会の七人委員に選ばれた。デューラーとは個人的にも親しかった。
画面の読み解き
所蔵館によれば、画面には大きな頭と肩だけが描かれる。デューラーのほかの多くの肖像と違い、モデルはまっすぐ見る者に向き合い、周りの光や反射を映して輝く目で、こちらを見すえる。その親しげでいて疑い深く批判的なまなざしは、率直で開けっぴろげな人柄をうかがわせる。左上の銘「1526年、ヒエロニムス・ホルツシューアー、57歳」がモデルの名と年齢を記し、右には画家の頭文字「AD」がある。
技法・様式
所蔵館によれば、顔の面やしわ、ふくらみに沿った肉づけは柔らかいが、顔の形は厳しく鋭く縁どられている。顔立ちのわずかな左右のずれや、鼻の付け根の上の眉間のかすかなしわまで、細かく観察されている。厳しい表情は、柔らかく弧を描く唇と、赤みのある老いた顔を冠のように囲む銀色の髪で和らぐ。髪の描き方も多彩で、頭髪では筆が長く曲がる巻き毛と房をたどり、口ひげでは落ち着いた線が口の形を強め、あご髭は銀色の網目のように編まれていく。
来歴
所蔵館によれば、本作は19世紀の終わりまでニュルンベルクにあり、ホルツシューアー家の子孫が所有していた。一時は忘れられていたが、古いドイツ美術の再発見とともに、1812年頃には一躍話題となった。あまりに新鮮で意外だったため、名高い収集家ズルピッツ・ボワスレーは贋作と考え、「大悪党が一枚かんでいる」と弟に書き送った。しかし本作は以前から知られ、たびたび記録にも残っていた。古い額には引き戸式の木の蓋がつき、ホルツシューアー家と妻の実家ミュンツァー家を合わせた紋章が描かれている。1884年、同館がホルツシューアー家のコレクションから購入した。所蔵番号557E。
意義
所蔵館によれば、デューラーは現実に忠実に描きながら、外見だけでなく人柄までを目に見えるものにし、さらにその人柄を、個人を超えた一つの典型へと高めた。それでもこれは公式の肖像ではなかった。ふだんは蓋が閉じられ、壁に掛けて眺めるものではなかったため、見えないまま守られ、それがよい保存状態の理由かもしれないという。