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《男性の肖像(自画像?)》

Portrait of a Man (Self Portrait?)
《男性の肖像(自画像?)》ヤン・ファン・エイク
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ヤン・ファン・エイク
制作年
1433年
素材
板 / 油絵具
寸法
26 × 19 cm
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暗い背景から、赤い布を頭に高く巻き上げた男が、わずかに身を乗り出してこちらを見つめる。毛皮の襟の衣をまとい、顔には目尻のしわやこめかみの血管、無精ひげまで細かく描き込まれている。

概要

《男性の肖像(自画像?)》は、ネーデルラントの画家ヤン・ファン・エイクが1433年に描いた油彩の肖像画で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では縦26センチ、横19センチの板(おそらくオーク材)で、所蔵番号はNG222。文字の記された当時のままの額に収められ(図版は画面のみ)、館の第52室に展示されている。館は、この無表情な顔は「ほぼ確実に」ファン・エイク本人のもので、画家の技量を力強く示す作品だとしている。

画面の読み解き

館によれば、画家の姿を確かめられるほかの肖像は残っていないが、この絵は自画像らしく見える。男は鏡をのぞき込むようにわずかに身を乗り出し、鋭い青い目は、画家が片方ずつに集中したかのように少し違う方向を向いている。男の装いは裕福だが上流貴族ではない人のもので、ブルゴーニュ公フィリップ善良公の宮廷画家として高い俸給を得ていた画家にふさわしい。腰を帯で締めるゆったりした長衣「ウプランド」の高い襟には茶色の毛皮が付き、頭には15世紀に流行した男性の頭飾り「シャプロン」の赤い布を高く積み上げ、垂れの端を巻きつけている。上の額には画家の標語「Als Ich Can(我にできるかぎり)」がギリシア文字で大きく記され、下の額にはラテン語で「ヤン・ファン・エイクが1433年10月21日に私を作った」とある。

技法・様式

館によれば、明るく照らされた顔と暗い背景の強い対比が目を引く。光を受けて目元のしわ、こめかみの血管、口もとの線が浮かび上がるが、肩は狭くなで肩にし、頭を大きくして画面を支配させるなど、顔と体の比例には手が加えられている。下描きは少なく、鼻を大きくして顔の他の部分より少し横向きにしたのは、顔を見分けやすくするための画家らしい工夫である。無精ひげは、暗い茶色の点の上に白い点を重ねる素早い筆で描かれ、あごには白に少し青を混ぜて光を受けたように見せている。背景はもともと青で、今の黒はほぼ確実に後世の塗り重ねである。文字は額に彫り込んだように描かれ、銘の行がずれて引き直された跡や、10月の文字が端に押し込まれた様子も見て取れる。

来歴

館によれば、板の裏にはアランデル伯のコレクションの品であることを示す書き込みがある。トーマス・ハワード(アランデル伯)は1642年から1644年のアントウェルペン滞在中にこの絵を持っていた。伯の収集は未亡人アラシア・タルボットに伝わり、彼女の没後、1655年にアムステルダムで作られた財産目録に「ヤン・ファン・エイク自筆の肖像」として載っているとみられる。館は1851年に本作を購入した。

意義

館によれば、標語「Als Ich Can」はフランドルのことわざの略で、「我にできるかぎり(望むほどではないが)」という意味に、画家の名「エイク」をかけた言葉遊びになっている。控えめな言葉に見えて、そのじつ画家の並外れた技量にさりげなく目を向けさせる。同じ館が所蔵する同年代の作品に、《アルノルフィーニ夫妻像》(1434年)がある。