《マイ・ワイフズ・ラヴァーズ》
桃色の繻子の布と金の装飾の黒い家具を背に、ふさふさした毛の猫たちが段の上や床に群れる。中央には胸の白い茶色の大きな猫が座ってこちらを見つめ、白いアンゴラ猫が寄り添う。手前の絨毯の上では、蝶に猫たちが目を向ける。
概要
《マイ・ワイフズ・ラヴァーズ》(英: My Wife's Lovers、「妻の恋人たち」の意)は、オーストリア出身の画家カール・カーラーが1891年から1893年頃に描いた油彩画である。縦177.8センチ、横258.4センチ。サンフランシスコの富豪ケイト・バーズオール・ジョンソンが飼っていた42匹の猫を、実物より大きく描く。サザビーズによれば、題は夫人の夫が付けたとされる。現在は個人が所蔵する。
画面の読み解き
桃色の繻子の布と、金の装飾をほどこした黒い家具を背に、ペルシャ猫やアンゴラ猫が段の上や床に思い思いの姿で集う。サザビーズによれば、中央に座る猫はスルタンといい、ジョンソン夫人がパリへの旅で見初め、売り物ではないと断られながらも値の倍を申し出て、3000ドルで連れ帰った。黄色のまだらのある黄褐色の毛に白い胸、大きな緑の目の猫だという。そのすぐ横の白い猫は、青い目の白いアンゴラ猫ヒズ・ハイネスかもしれない。ほかの40匹の姿勢や表情も、画家が3年かけて描きためた一匹ずつの素描から写された。手前の絨毯の上には蝶が舞い、何匹かの猫がそれを見つめる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれ、左下に「C. Kahler」の署名がある。サザビーズによれば、カーラーはそれまで猫を描いたことがなかったが、夫人に雇われてから3年にわたり、さまざまな姿勢の猫を素描して、一匹ずつの性格や癖をつかんだ。本作はその集大成で、サザビーズは「並外れた集団肖像画」と呼ぶ。英語版ウィキペディアは、カーラーを洗練されたアカデミック美術の技法で知られた画家とする。
来歴
サザビーズによれば、1891年にジョンソン夫人が注文し、夫人は1893年のシカゴ万国博覧会のカリフォルニア館に本作を貸し出して、たちまち評判を呼んだ。1894年の夫人の遺産の競売ののち、サンフランシスコのアーネスト・ハケットが買って自分の画廊に掲げた。画廊は1906年のサンフランシスコ地震で壊れたが、本作は生き延びた。その後、フランク・C・ヘイヴンズが開いた公開の画廊を経て、1940年代にはシカゴのジュリアン夫妻がアメリカ各地を巡回させた。英語版ウィキペディアによれば、2015年11月、ニューヨークのサザビーズの競売で、カリフォルニアの個人が82万6000ドルで落札した。翌年にはポートランド美術館で公開された。
意義
サザビーズによれば、1930年の新聞は本作を「世界で最も優れた猫の絵の一つ」と呼び、1940年代の巡回をきっかけに9000枚の複製が売れて、1949年には雑誌『キャット・マガジン』が「世界最高の猫の絵」と評した。日本語版ウィキペディアによれば、愛玩動物を描いた絵としては当時ほかに例のない大きさで、画家の名を広めた。