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《ドニエプルの月夜》

Лунная ночь на Днепре
《ドニエプルの月夜》アルヒープ・クインジ
Wikimedia Commons / ロシア美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
アルヒープ・クインジ
制作年
1880年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
105 × 144 cm
流派
移動派
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暗い夜空に雲の帯がたなびき、その切れ間で満月が緑がかった光を放つ。画面の下では、月の光を映したドニエプル川の水面が燐光のように輝き、手前の暗い岸には小屋の影と小さな窓明かりが見える。

概要

《ドニエプルの月夜》(露: Лунная ночь на Днепре)は、ロシアの画家アルヒープ・クインジが1880年に描いた油彩画である。縦105センチ、横144センチのキャンバスで、サンクトペテルブルクのロシア美術館が所蔵する。所蔵館によれば、クインジの創作の最大の達成であり、その芸術の頂点をなす作品である。

画面の読み解き

所蔵館の研究者イリーナ・シュヴァロワによれば、画家は自然を夜の闇に沈め、細部をぎりぎりまで省いて、その詩的な本質を凝縮して示した。画面の上半分では、いく筋もの雲の帯が空にたなびき、その切れ間に満月が緑がかった光を放つ。下のほうでは、ゆったりと流れるドニエプル川の水面がかすかに波立ち、所蔵館のいう「燐光のような」反射の輝きに照らされる。手前には暗い岸が広がり、川べりには小屋の影が立ち、右手の家々の窓には小さな明かりがともる。画面の大部分は闇に包まれ、光は月と川面に集まっている。シュヴァロワによれば、装飾的な色の斑点とその対比、光の変化、奥へ広がる構図といった手段の正確さが、この凝縮を支えている。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、とくに川を照らす反射の光の表現は、色の新しい表現手段の探究と、絵具の調合や混合の実験にもとづく。同館の研究者セルゲイ・クリヴォンデンチェンコフは、その秘密は画家の技法と、アスファルト系の絵具など新しい素材の巧みな使い方にあったとする。トレチャコフ美術館によれば、特別な光の効果は、月の円盤や水面のさざ波を厚く盛った絵具(インパスト)が光を反射することから生まれた。ただし所蔵館によれば、色調はいまではかなり暗くなっている。

来歴

所蔵館によれば、画家は1880年からドニエプルの姿を探り続け、本作はその中でも最も印象深い作品となった。シュヴァロワによれば、画家は生涯でただ一度、年だけでなく完成の日「9月5日」まで画面に記した。本作は同年、芸術奨励協会で、一枚の絵だけを見せる例のない展覧会で公開され、「信じられないほどの印象」を与えた。トレチャコフ美術館によれば、画家は暗くした部屋で、観客から見えない横からの照明を当てて展示した。クリヴォンデンチェンコフによれば、特別な照明を探して絵の裏をのぞく観客や、画家を魔術だと責める者までいた。本作は1928年に国立物質文化史アカデミー(大理石宮殿の旧蔵品)から同館に移された。所蔵番号はЖ-4191で、ミハイロフスキー宮殿の第35室に展示されている。

意義

所蔵館によれば、本作はニコライ・ゴーゴリの文学に直接通じるものとして受け取られ、南の自然をロマン主義的にとらえた。色が暗くなった今も魅力を失わないのは、目の錯覚ではなく、高い詩的感情と宇宙の壮大さこそがこの絵の核心だからだという。トレチャコフ美術館によれば、化学者ドミトリー・メンデレーエフや詩人ヤコフ・ポロンスキーも強く心を動かされ、ポロンスキーは「これは絵なのか、現実なのか」と書いた。画家は1880年代にいくつかの異版を描き、その一つ《ドニエプルの夜》はトレチャコフ美術館にある。所蔵館によれば、この大成功のあとまもなく、画家は展覧会への出品をやめた。