《ラ・ジャポネーズ》
団扇が散らばる青灰色の壁を背に、金髪の女性が真っ赤な着物をまとって振り返り、三色の扇をかざしてほほえむ。着物の裾には刀に手をかける武者の刺繍が大きく浮かび、畳のような床にも団扇が落ちている。
概要
《ラ・ジャポネーズ》は、フランスの画家クロード・モネが1876年に描いた油彩画で、ボストン美術館が所蔵する。縦2メートルを超える等身大の画面に、日本の衣装をまとった最初の妻カミーユを描く。所蔵館によれば、印象派の風景画の父として知られるモネが若いころに手がけた大きな肖像画のなかで、最後の一点にあたる。同年の第2回印象派展に出品され、大きな注目を集めた。
画面の読み解き
所蔵館によれば、モネはもともと黒髪のカミーユに金髪のかつらをつけさせ、パリの女性として描いた。そうすることでモデルが誰かを隠しつつ、周りの異国の品々との違いを際立たせている。カミーユは豪華な刺繍の着物をまとい、16本の紙の団扇に囲まれて、畳のようなものの上に立つ。手にした扇は、フランス国旗の赤・白・青に彩られている。所蔵館は、この女性が「日本の女」というよりも「パリの女」だと気づかせる仕掛けだと述べる。
技法・様式
所蔵館によれば、ヨーロッパでは1860年代から1870年代にかけて日本の美術と文化が大流行した。1854年の日本の開港とともに、織物や磁器、色鮮やかな浮世絵が西洋の市場にあふれた。モネは早くから熱心に浮世絵を集め、日本の芝居の衣装も何着か持っていた。カミーユはそのひとつを着て描かれたらしい。身をひねる中央の人物と着物の模様を強調した構図は、遊女や役者を描く浮世絵への傾倒を示すとともに、日本の衣装を着た西洋の女性を描く当時のサロンの流行も意識している。大きな人物画は画家にとって最大の挑戦とされてきた形式であり、モネはそこで鮮やかな色彩の妙技を見せた。
来歴
所蔵館によれば、モネは本作を1876年に「ジャポヌリー」の題で出品した。日本の品を模した西洋の作品を指す、当時生まれたばかりの言葉である。インターネットミュージアムの2014年の展覧会報告によれば、所蔵番号は56.147で、「1951 Purchase Fund」により購入された。2013年3月から館の展示室で修復が公開で行われ、2014年には東京の世田谷美術館の「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」で、修復後初めて公開された。
意義
所蔵館によれば、本作は出品当時、称賛と嘲笑をほぼ同じだけ浴びた。保守的な批評家は「顔に人間らしさのない大きな人形」「緋色の機械」などと評したが、柔軟な人々はモネの大胆な色づかいと確かな筆さばき、日本美術への遊び心ある言及を認めた。批評家エミール・ゾラは「色彩においても奇妙さにおいても驚くべきもの」と評した。所蔵館は、当時多額の負債を抱えていたモネが、裕福な買い手を見込んでこの主題を選んだ可能性も挙げている。2014年の日本展は本作を、初期のジャポニスムを代表する大作として紹介した。