《ポンパドゥール夫人の肖像》
- 作者
- フランソワ・ブーシェ
- 制作年
- 1759年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 91 × 68 cm
- 所蔵
- ウォレス・コレクション (P418)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- ロココ
木立の茂る庭で、ばら色の絹のドレスの女性がこちらを向いて立ち、右手に閉じた扇を持って石の台座に腕をあずける。台座には子どもを慰める女性の像、足もとのベンチには小さなスパニエル犬がいる。
概要
《ポンパドゥール夫人の肖像》は、フランスの画家フランソワ・ブーシェが1759年に描いた油彩の肖像画である。縦91センチ、横68センチのキャンバスで、ロンドンのウォレス・コレクションが所蔵する。描かれたのは、フランス王ルイ15世の寵姫ポンパドゥール侯爵夫人。所蔵館によれば、ブーシェがこの名高いパトロンを描いた最後の肖像で、二人がともにつくりあげた図像をよく示している。その図像は、王をはじめとする夫人の親しい人々にとって特別な意味をもつものだった。
画面の読み解き
所蔵館によれば、ふつうは左を向いて描かれた夫人が、ここでは珍しく正面を向き、扇を手に、友情とプラトニックな愛を表す像に優雅にもたれている。この像は、夫人が1755年にジャン=バティスト・ピガールに注文した《愛を抱く友情》(現在ルーヴル美術館)を思わせる。誠実さは愛犬のスパニエル、イネスによって、愛はオレンジの花とばらによって表される。舞台は、夫人と王がともに愛した庭づくりを思わせ、夫人の最も華麗な別邸だったベルヴュの庭園を連想させる。濃い緑の木立の格子垣を背に、豪華なばら色のドレスの夫人は、生きたばらのように立っている。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、ブーシェは装いの細部をすべて描き込み、絹タフタのドレスは、灰色の下塗りの上に薄いばら色を重ねて、印刷では再現しがたい銀色の輝きを与えている。夫人は、ブーシェが厳密な写実よりも自分を魅力的に描くことを重んじ、1750年3月に最初の肖像ができたのち、さらに11点を注文した。
来歴
所蔵館の収蔵品データベースによれば、本作はパリのサロンには出品されなかったらしく、見た人は限られていたとみられる。所蔵番号はP418。現在は館の階段の踊り場に展示されている。
意義
所蔵館によれば、1745年に宮廷に入った夫人は、パリの新興ブルジョワの娘として初めて寵姫となった人物で、王との恋愛が1750年ごろに冷めると、芸術を通じて王を楽しませる役目に力を注いだ。ブーシェにとって夫人は王に次ぐ大口の顧客であり、その支えで当代一の装飾画家となった。戦争と世間の不評で夫人の評判が揺らぐと、こうした官能的な表現は徳を示したい寵姫にふさわしくなくなり、夫人はより控えめな肖像をカルル・ヴァン・ローやドルーエに求めた。それでも本作は、夫人を描いた最もよく知られた図像の一つである。