《オレンジの木々》
夏の庭に、鉢植えのオレンジの木が濃い影を落とす。木陰の鉄の椅子に麦わら帽子の男が腰かけ、背を向けて新聞を読む。奥では若い女性が鉢の縁に身をかがめる。その向こうには、日に照らされた赤い花壇と、弧を描く砂利道が明るく広がる。
概要
《オレンジの木々》(仏: Les Orangers)は、ギュスターヴ・カイユボットが1878年に描いた油彩画である。縦154.94センチ、横116.84センチの大きなキャンバスで、ヒューストン美術館が所蔵する。英語版ウィキペディアによれば、パリ近郊イエールにあった一家の田舎の別荘で、戸外制作によって描かれた。印象派の画家たちは戸外で描くことで知られたが、光が変わる前に描き上げる難しさから、これほどの大画面を戸外で仕上げた例は珍しかった。
画面の読み解き
英語版ウィキペディアによれば、描かれているのは昼の光景で、画家の弟マルシャルが、こちらに背を向けてオレンジの木陰に座り、読み物に目を落としている。いとこのゾエ・カイユボットは、当時庭の植木鉢として流行したヴェルサイユ式の木箱の一つのそばに立つ。二人はそれぞれ自分の思いにひたりながら、静かな午後を過ごしている。手前の軽いばね鋼の庭椅子は、イエールで描かれたほかの作品にも登場する。奥では強い日ざしが、弧を描く砂利道に囲まれた丸い花壇を照らし、道の端では犬が眠っているように見える。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。英語版ウィキペディアによれば、画面下の日陰の前景と明るい奥とのあいだに鋭い対比がつけられ、影はくすんだ緑や紫で、芝生や花壇は鮮やかな緑や赤、白で描かれる。光と影の境をはっきり描き分けるやり方は、ルノワールやモネの似た戸外の場面に見られる木漏れ日の表現とは異なる。美術史家カーク・ヴァーネドーは、この対比が午後の暑さを感じさせるとしている。
来歴
所蔵館によれば、本作はオードリー・ジョーンズ・ベックの寄贈による。英語版ウィキペディアによれば、ベックの収集は長くヒューストン美術館に貸し出されたのち、1999年に館へ寄贈され、本作は彼女の名を冠したベック館に展示されている。
意義
英語版ウィキペディアによれば、カイユボットは印象派の中でも最も熱心な園芸家の一人で、自然のままの庭より手入れの行き届いた整形の庭を好み、果樹も刈り込んでまとまった形に育てた。それは遠近法への関心と通じるとも指摘される。同じ年の3月に画家が手に入れたモネの《昼食》も、本作に影響を与えたとみられている。印象派の画家にして収集家だったカイユボットの、私的な庭の世界を伝える作品である。