《ラ・ムスメ》
薄い緑の壁を背に、赤と青の縞の上着に水玉のスカートの少女が籐の椅子に座る。膝の上の手には、夾竹桃のつぼみの小枝を持っている。
概要
《ラ・ムスメ》は、オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホが1888年に南フランスのアルルで描いた肖像画で、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では、カンヴァスに油彩で描かれ、縦73.3センチ、横60.3センチ。所蔵番号は1963.10.151で、チェスター・デールのコレクションの一つとして、西館主階の83室に展示されている。
画面の読み解き
薄い緑の壁を背に、赤と青の縞の上着を着て、青地にだいだい色の水玉のスカートをはいた少女が、曲げ木の椅子に腰かける。髪には赤いリボンを結び、膝に置いた手に花の小枝を持つ。館が Google Arts & Culture に寄せた解説によれば、ゴッホは本作を説明するなかで何度も、少女の手にある夾竹桃のつぼみに触れている。花の意味ははっきりしないが、誕生と再生という自然の循環への画家の汎神論的な信念とかかわるのかもしれないという。
技法・様式
館の解説によれば、丁寧に肉づけした顔と、少女を形づくる大胆な補色の力強い線の模様は、若いモデルへのゴッホの共感を表す様式上の手立てである。館の記録によれば、テオの妻の兄アンドリース・ボンゲルが1890年に作った作品の一覧には、「花を持つ娘」として載っている。
来歴
館の記録によれば、本作は画家の義妹ヨハンナ・ファン・ゴッホ=ボンゲルが所有し、1909年にハーグの画商デ・ボワを通じてミュンヘンの作家カール・シュテルンハイムに売られ、同年パリのベルネーム=ジューヌ商会と交換された。その後、パリの収集家アルフォンス・カンやオスロの J. B. スタングの手を経て、1929年5月21日にニューヨークの収集家チェスター・デールが買い、1963年の遺贈で館に入った。1930年代には《ガシェ嬢の肖像》の題で展示されたこともあり、作品の裏には当時の貼り紙が残っている。
意義
館の解説によれば、1888年7月29日、ゴッホは弟テオへの手紙に、「ムスメが何か知っているなら(ロティの『お菊さん』を読めばわかるだろう)、ちょうど一人描いたところだ。まる1週間かかった」と書いた。種本は、フランス人の男と日本の娘の恋を描いて当時のフランスの日本への熱を映した人気小説で、作者は若く愛らしい日本の娘を「ムスメ」と呼んでいた。ゴッホはそこから想を得て、プロヴァンスの少女を描いた。ゴッホは、本作を含む一群の肖像習作を、「絵のなかで魂の底から心を揺さぶり、何よりも無限を感じさせてくれる唯一のもの」と書いている。