《オレンジを持つユダヤ人の女性》
- 作者
- アレクサンデル・ギェルィムスキ
- 制作年
- 1880–1881年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 65 × 54 cm
- 所蔵
- ワルシャワ国立美術館
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
赤茶の頭巾と肩掛けをまとった年老いた女が、オレンジを盛った籠を両脇に提げて立つ。胸の前の両手には白い編み物。疲れたまなざしの背後には、霧にかすむ青い町並みと教会の尖塔が広がる。
概要
《オレンジを持つユダヤ人の女性》(波: Żydówka z pomarańczami)は、ポーランドの画家アレクサンデル・ギェルィムスキが1880年から1881年ごろに描いた油彩画である。縦65センチ、横54センチのキャンバスで、ワルシャワ国立美術館が所蔵する。「オレンジ売りの女」の愛称でも呼ばれる。ワルシャワの貧しい地区の人々を描いた作品の一つで、第二次世界大戦中に失われ、2011年に館へ戻った。
画面の読み解き
画面の中央に、年老いた女が正面を向いて立つ。赤茶の布を頭に巻き、赤い肩掛けを胸の前で交差させ、両脇にはオレンジを盛った籠を提げる。胸の前で組んだ両手は白い編み物を持ち、顔にはしわが深く刻まれる。右の籠には白い布がかかり、暗い茶の服とオレンジの鮮やかな色が、背景の青白い霧と向き合う。所蔵館の解説は、あきらめ、生きることに疲れ、貧しさにさいなまれた女の顔が胸を打つとする。背景には霧にかすむ青白い町並みと教会の尖塔が広がり、下の方には橋の欄干の柱が並ぶ。館の目録は、主題を表す語にワルシャワのポヴィシレ地区とキェルベチ橋を挙げている。左下には「A. GIERYMSKI / WARSZAWA」と署名がある。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、画家は写真家コンラト・ブランデルがノヴィ・シフィャト通りのアトリエで撮った写真から直接着想を得て、同じ主題で何点かの素描と、少なくとも3点の油彩を描いた。そのうち、カトヴィツェのシレジア博物館が所蔵する《レモンを持つユダヤ人の女性》は、茶と灰の抑えた色調で描かれる。それに比べて本作は、空間と光、色に富む。画家は同じ主題を繰り返しながら、理想の構図と描き方を探り続けた。
来歴
所蔵館によれば、1902年にはワルシャワのシュレンキエル家の所有で、1928年に館が購入した。第二次世界大戦が始まると、ほかの作品とともに木箱に詰められて倉庫にしまわれたが、1944年のワルシャワ蜂起ののち、1945年1月に館長スタニスワフ・ロレンツが戻ったときには失われていた。2010年、ハンブルク近郊ブクステフーデの競売会社に出品されているのが見つかり、戦前の写真で同定された。文化・国家遺産省とPZU財団の尽力で2011年に館へ戻り、修復ののち、19世紀美術の展示室に掛けられている。所蔵番号はMP 5526 MNW。
意義
所蔵館によれば、自作に厳しかった画家が珍しく気に入った絵で、友人プロスペル・ジェコンスキへの手紙で「おそらく最もよい絵」「ひどく立体的で色彩に富む」と書いた。肖像をあまり描かなかった画家の作品の中で、町の眺めに人物を添えた当時の風俗画からも離れた一枚である。画家自身も貧しく、ワルシャワでは歴史を描かずありふれた主題ばかりを描くと非難されていた。