《ジャックとベルト・リプシッツ》
灰色の壁を背に、黒いタートルネックに茶色の上着の男が立ち、その前に白い襟の黒い服の女が座る。男は女の肩に手を置き、二人とも卵形の顔に細い目を伏せている。上には「LIPCHITZ」の文字がある。
概要
《ジャックとベルト・リプシッツ》(英: Jacques and Berthe Lipchitz)は、イタリア出身の画家アメデオ・モディリアーニが1916年に描いた油彩画である。縦81.3センチ、横54.3センチのキャンバスで、シカゴ美術館が所蔵する。友人の彫刻家ジャック・リプシッツが、詩人ベルト・キトロッセルとの結婚を機に注文した夫妻の肖像である。
画面の読み解き
灰色の壁と褐色の扉の前で、男が立ち、その前に女が座る。男は黒いタートルネックの上に茶色の上着を着て、片手を女の肩にかける。女は白い波形の襟のついた黒い服をまとい、髪を真ん中で分けている。二人の顔はどちらも卵形に単純化され、細い目は伏せられて、長い鼻と小さく結んだ口が並ぶ。女の頬には赤みがさし、男の顔は平たく塗られている。所蔵館によれば、画面の上の中央には「LIPCHITZ」の銘、右上には「modigliani」の署名がある。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、モディリアーニの最良の絵は1914年から1920年の早すぎる死までに描かれた。主題を主に肖像と裸婦に絞り、繊細に引き伸ばされた形による独特の様式を築いた。本作でも、二人の人物は細長い画面いっぱいに縦に重ねられ、肩から首、顔へと引き伸ばされた形が、画面の縦長の比率と響き合う。背景の壁や扉は、灰色と黄土色の平たい面に整理されている。
来歴
所蔵館によれば、イタリアで美術を学んだモディリアーニは1906年にパリのモンパルナスへ移り、そこでリプシッツと出会った。金に困っていた友人を助けようと、リプシッツは結婚を機に本作を注文した。リプシッツによれば、モディリアーニは2日で描き上げたが、少しでも多くの報酬を払えるよう、さらに2週間手を入れてもらったという。本作はリプシッツが1916年に画家から直接手に入れ、1921年頃、交換によってパリの画商レオンス・ローザンベールの手に渡った。1922年にシカゴのフレデリック・C・バートレットとヘレン・バーチ・バートレット夫妻が買い、ヘレンの死後の1926年1月27日に所蔵館へ寄贈された。所蔵番号は1926.221。
意義
所蔵館によれば、モディリアーニの才能は抜きんでていたが、作品に買い手がついたのは、結核と伝説的なボヘミアンの暮らしによって早まった1920年の死の後だった。本作も、画家の没後まもない1920年12月にパリのギャルリー・モンテーニュで開かれた回顧展に「彫刻家L.とその妻の肖像」として出品され、1925年にはバートレット夫妻の近代絵画の収集の一枚としてシカゴとボストンで公開された。モディリアーニがエコール・ド・パリの仲間を描いた肖像の一枚である。