《イア・オラナ・マリア》
- 作者
- ポール・ゴーギャン
- 制作年
- 1891年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 113.7 × 87.6 cm
- 所蔵
- メトロポリタン美術館
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
- 流派
- ポスト印象派
赤い花柄の腰布をまとった女が幼子を肩に乗せ、二人の頭には金色の光輪が浮かぶ。花咲く木々の向こうで、上半身をあらわにした二人の女が胸の前で手を合わせ、その奥に黄色い翼の天使が立つ。手前にはバナナなどの果物が盛られている。
概要
《イア・オラナ・マリア》(英: Ia Orana Maria (Hail Mary))は、フランスの画家ポール・ゴーギャンが1891年に描いた油彩画である。縦113.7センチ、横87.6センチのキャンバスで、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する。題はタヒチ語で、館は英語で「Hail Mary(アヴェ・マリア)」と添える。キリスト教の主題をポリネシアの姿で描いた、最初のタヒチ滞在での初の大作である。
画面の読み解き
メトロポリタン美術館の解説は、ゴーギャンが1892年3月の手紙で本作をこう説明したと紹介する。「黄色い翼の天使が、ともにタヒチ人のマリアとイエスを、二人のタヒチの女に示している。女たちは裸で、腰から巻く花柄の木綿の布パレオをまとう。背景はとても暗い山と花咲く木々……暗い紫の小道とエメラルド緑の前景、左にはバナナ」。右の聖母は赤いパレオをまとい、肩の幼子とともに頭に光輪をいただく。中ほどの二人の女は胸の前で手を合わせ、左奥の天使は花の陰になかば隠れる。左下の手前には「IA ORANA MARIA」の文字が記され、果物の供え物が置かれる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれ、右下に署名と年記がある。館によれば、ゴーギャンは構図の多くを、手元にあったジャワのボロブドゥール寺院の浮彫の写真に拠った。館の論考は、ゴーギャンのタヒチの絵を、西洋と東洋のさまざまな源を混ぜ合わせ、装飾的で抽象的な模様と人物表現を組み合わせた新しい総合的な様式とする。濃い緑や赤、紫の平らな色面を並べる画面は、総合主義の考え方をタヒチの主題に移したものである。
来歴
ゴーギャンは1891年にタヒチへ渡り、本作はその年のうちに描かれた。手紙で「かなり満足している」と書いた一枚である。のちにアメリカの収集家サム・A・ルイソーンの所蔵となり、1951年に彼の遺贈でメトロポリタン美術館に入った。所蔵番号は51.112.2。いまは同館の第825室に展示されている。
意義
メトロポリタン美術館によれば、ゴーギャンはポリネシアの信仰に想を得た連作に取りかかる前に、最初のタヒチの大作をキリスト教の主題に捧げた。タヒチの聖母が、色とりどりのパレオをまとった二人の女に、豊かな熱帯の風景の中で拝まれる。ゴーギャンはこのあと、タヒチの神話や信仰そのものを主題とする作品へと進んでいく。