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《デンマークのクリスティーナ、ミラノ公妃》

Christina of Denmark, Duchess of Milan
《デンマークのクリスティーナ、ミラノ公妃》ハンス・ホルバイン
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ハンス・ホルバイン(子)
制作年
1538年
素材
板(オーク材) / 油絵具
寸法
179.1 × 82.6 cm
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青緑の壁を背に、黒い喪服の若い女性が全身で正面を向いて立つ。毛皮の裏地の黒い繻子の外套は床まで垂れ、白い顔と、淡い色の手袋を持って組んだ両手だけが明るく浮かぶ。足もとの壁に体の影が落ちる。

概要

《デンマークのクリスティーナ、ミラノ公妃》は、ドイツ出身の画家ハンス・ホルバイン(子)が1538年に描いた油彩の肖像画で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では、バルト海地方のオーク材の板に描かれ、縦179.1センチ、横82.6センチ。所蔵番号はNG2475で、第4室に展示されている。モデルは、デンマーク王クリスチャンの末娘クリスティーナ(1522〜1590年)である。1538年、前年10月に3人目の妃ジェーン・シーモアを亡くしたイングランド王ヘンリー8世は4人目の妃を探しており、宮廷画家だったホルバインが、当時16歳のクリスティーナの姿を写すためブリュッセルへ送られた。

画面の読み解き

館の解説によれば、全身像の形式は、以前の王ヘンリー6世の好みにならったもので、ヘンリー6世は1446年に、花嫁候補の肖像は「顔立ちと背丈」の両方が分かるよう全身で描くよう定めていた。同時代の人々によれば、クリスティーナは年齢のわりに背が高かった。彼女は、1535年に亡くなった夫ミラノ公のための喪服を着ており、黒いドレスの上に毛皮の裏地の黒い繻子の外套をまとい、黒い頭巾で髪を覆う。体の残りを包む深い黒に対して、顔と手は白く見えるが、同時代の人は、色白ではないものの、すばらしく美しい小麦色の顔で、唇は赤く頬は血色がよいと伝えている。館の音声解説によれば、左手の薬指には赤い石の指輪をはめる。

技法・様式

館によれば、落ち着いた堂々とした存在感は、顔立ちと体の左右の対称と、幾何学的に組み立てられた体によって高められている。顎は、柔らかな手袋を握る腕と手が形づくる小さな逆三角形の一番下の点となり、それらはドレスの裾が形づくる正三角形の上にのって、人物を床に安定させる。ホルバインは人物のまわりに余白をほとんど残さず、人物を見る者に近づけて親密さを高めた。本作は、質感を描き出す見事な腕前によって、モデルが実際にそこにいるかのような錯覚を生むホルバインの力をよく示す。黒い繻子は光を受けて銀色に光り、なめらかさと冷たさを感じさせる。澄んだ光が背後の壁に体の濃い影を落とし、人物と壁の間の空間を感じさせる。館は、彫刻と同じく、ホルバインは王に人物のまわりを歩いて見ることを想像させようとしたとしている。

来歴

館によれば、ホルバインがクリスティーナと対面したのは1538年3月12日の午後1時から4時までだけだったと記録されている。画家はその間に素描を描き、それをもとに板に写して肖像を描いた。数日後に画家から絵(おそらく素描)を受け取った王は大いに喜び、「かつてないほど上機嫌で、一日中楽士に演奏させた」と伝えられる。結婚の交渉は実らなかったが、ヘンリー8世は1547年に没するまで肖像を手元に置いた。館の来歴によれば、その後ラムリー卿、アランデル伯の収集を経てノーフォーク公家に伝わり、1880年から館に貸し出されていた。1909年、公が売却を申し出て、アメリカの収集家ヘンリー・クレイ・フリックに渡るおそれが生じたが、土壇場で美術基金が匿名の寄付を得て買い取り、館に寄贈した。

意義

館によれば、本作は貸し出されていた間から館で最も賞賛される絵の一つとなり、国外に流出するおそれは新聞で大きな反発を呼んだ。イングランド王の花嫁候補を、イングランドの宮廷で最も名高い画家が描いた肖像として、国民の文化遺産の一部とみなされたためである。同じ画家の作品には、同館の《大使たち》がある。