《オダリスク》
青い絹と白い布が波打つ寝台に、裸の女性がうつ伏せに横たわり、肩越しにこちらを振り返る。結い上げた髪には赤い羽根飾り。腰から下は布からこぼれ、脚は寝台の端へ投げ出される。左下の小卓には香炉と真珠の首飾りが置かれている。
概要
《オダリスク》(仏: L'Odalisque)は、フランソワ・ブーシェが1745年に描いた油彩画である。縦53.5センチ、横64.5センチの小さなキャンバスで、パリのルーヴル美術館が所蔵する。「茶髪のオダリスク」とも呼ばれる。オダリスクはトルコの後宮に仕えた女性を指し、日本語版ウィキペディアによれば、ブーシェの時代に広がった東方への関心のなかで、豊満な裸婦を描く格好の口実ともなった主題である。
画面の読み解き
青い絹と白い布が乱れる寝台に、裸の女性がうつ伏せに横たわる。上体を枕にあずけて肩越しにこちらを振り返り、頬はほんのり赤い。結い上げた黒髪には赤い羽根飾りと金の髪飾りが挿される。腰から下は布からあらわになり、片脚を伸ばし、もう一方を折り曲げて寝台の端へ投げ出す。左下の小卓には香炉や真珠の首飾りが置かれ、背後には草花の文様の衝立が立つ。日本語版ウィキペディアによれば、枠のない寝台や衝立の植物文様、髪の羽根が、異国の主題をほのめかしている。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。絹の青と布の白、肌の薄紅が軽やかな筆で描き分けられ、ロココらしい華やかな色の調和をつくる。日本語版ウィキペディアによれば、当時、横たわる裸婦は同時代の女性ではなく女神を表すものと受け取られており、本作のポーズも、ブーシェが神話画の人物にしばしば用いたものである。
来歴
所蔵館によれば、1914年にバジール・ド・シュリシュタン男爵の遺贈によってルーヴル美術館に入った。所蔵番号はRF 2140で、現在はシュリー翼2階の第921室(風俗画)に展示されている。2023年には「ルーヴル美術館展 愛を描く」で東京と京都に貸し出された。日本語版ウィキペディアによれば、ブーシェは同じ構図の署名入りの作を複数描き、ランス美術館にも1点がある。
意義
日本語版ウィキペディアによれば、女性は特定の人の肖像のように個性的に描かれており、ポンパドゥール夫人などさまざまな候補が挙げられてきたが、美術史家の多くは画家の妻だと考えている。批評家ディドロは、似た作品を引き合いに出して、妻を裸で描いたとブーシェを非難した。一方、同じ構図の作が広く出回ったことから、妻とする説を疑う研究者もいる。神話の衣を脱いだ官能的な裸婦像として、18世紀フランスの趣味をよく伝える作品である。