《兵隊ごっこをする少年たち》
木の枝が伸びる青空の下、石段の上で、熊毛の帽子をかぶり銃を担いだ少年が胸を張る。背後にも銃を担ぐ少年がいて、右では赤い頭巾の少年が太鼓を打ち、左では別の少年が祭りの鐘楼の玩具を手にのぞき込む。
概要
《兵隊ごっこをする少年たち》は、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤが1778年から1779年にかけて描いた油彩の風俗画で、マドリードのプラド美術館が所蔵する。縦146センチ、横94センチのキャンバスで、所蔵番号はP00783。王立サンタ・バルバラ・タペストリー工場で織られる壁掛けのための原画(カルトン)で、マドリード郊外のエル・パルド宮にあった、のちのカルロス4世夫妻、アストゥリアス公夫妻の寝室を飾る7点の連作の一つとして描かれた。プラド美術館は展覧会「マドリードのゴヤ」で、本作を、音楽と太鼓の響きで庶民の楽しさを伝えるゴヤの原画の一つに挙げている。
画面の読み解き
アラゴン州のゴヤ財団の作品目録によれば、4人の少年が、銃と太鼓、そして縁日で売られる鐘楼の玩具を手に、兵隊ごっこをしている。画面の中央では、高い熊毛の帽子をかぶり、青い上着と黄色い半ズボンの少年が、銃を肩に担いで石段の上に立ち、得意げにこちらを見る。その背後にも、銃を担ぎ背嚢を背負った少年がいる。右では赤い頭巾の少年がばちを振り上げて太鼓を打ち、左では金髪の少年が石段に身を乗り出して、小さな鐘楼の玩具を手にしている。背景には、細い木が青空に枝を伸ばしている。
技法・様式
同目録によれば、子どもは繰り返しゴヤの主題になり、エル・パルド宮の食堂の連作でも、扉の上の子どもの場面が大人の場面と響き合うように置かれた。扉や窓の上に子どもを描けば、人物を大きく縮めずに済み、部屋の装飾全体のまとまりも保たれる。美術史家ジャニス・トムリンソンは、空想に満ちた子どもの遊びを、隣り合う場面に描かれた大人たちの見世物の愚かさと、子どものにぎやかな時間の短さとに結びつけて読んでいる。ゴヤが下地に塗った赤みのある地塗りのため、画面は暗くなり、もとの色合いが失われてくすんで見えるという。
来歴
同目録によれば、1777年10月2日、ゴヤは王太子夫妻の寝室と控えの間に掛けるタペストリーの寸法の表を受け取った。1779年1月6日、本作を含む6点の原画、《マドリードの市》《瀬戸物売り》《軍人と婦人》《アセロラ売りの娘》《兵隊ごっこをする少年たち》《荷車の子どもたち》の勘定書をタペストリー工場に提出している。本作から織られたタペストリーは扉の上の飾りで、寝室の西の壁に、対となる《荷車の子どもたち》と向かい合って掛けられた。原画は1856年か1857年頃に工場から王宮に移され、1870年にプラド美術館に入った。
意義
ゴヤは1779年1月9日、友人マルティン・サパテールに宛てた手紙で、国王カルロス3世と王太子夫妻が「四枚の絵」をとりわけ気に入ったと書いている。どの絵かは記されていないが、同目録は、3日前に納めたこの連作の絵が含まれていた可能性が高いとし、スペインのさまざまな庶民の姿という主題が、啓蒙の時代の趣味に好まれていたと説明する。