《妬いているの?》
桃色の砂浜に、水浴を終えた二人のタヒチの女がいる。白い花冠の女は脚を折って座り、もう一人はその後ろで腹ばいに身を伸ばす。左上には赤や青の波打ち際がうねり、左下に題の言葉が書かれている。
概要
《妬いているの?》は、フランスの画家ポール・ゴーギャンが最初のタヒチ滞在中の1892年に描いた油彩画で、モスクワのプーシキン美術館が所蔵する。縦66センチ、横89センチ。原題「Aha oe feii?」はタヒチ語で、フランス語では「なに、妬いているの?」と訳される。ヴィルデンシュタイン・プラットナー研究所のゴーギャン油彩画目録によれば、下中央に署名と年記、左下に題が書かれている。
画面の読み解き
桃色の砂浜で、白い花の冠をつけた女が脚を折って座り、もう一人がその後ろで腹ばいになって身を伸ばしている。所蔵館の国立新西洋美術館の再現サイトによれば、主題はゴーギャンの紀行『ノア・ノア』の一節と結びつく。水浴を終えた二人の姉妹が浜辺の草に身を横たえ、昨日の恋と明日の恋を語り合ううちに、ある思い出が諍いを生む。「なに、妬いているの?」。画家はいつものように、この言葉をタヒチ語で画面に書き入れた。
技法・様式
同じサイトによれば、女たちのしなやかな姿態から、背景のうねる色の帯、日の温もりを残す桃色の砂まで、画面のすべてに生命の力がみなぎる。ゴーギャンは南国の主題に古典の形を織り込み、花冠の女の姿勢は、片膝をつくディオニュソスのヘレニズム彫刻から借りた。画家はその写真をタヒチに携えており、この姿勢を《ナヴェ・ナヴェ・モエ》(1894年)など後の作品でもくり返し用いた。
来歴
ゴーギャン油彩画目録によれば、本作は1892年12月にパリの友人ダニエル・ド・モンフレッドに託され、1893年にはコペンハーゲンの展覧会とパリのデュラン=リュエル画廊の個展に出品された。1895年2月、画家がパリのオテル・ドゥルオーで開いた売り立てでモーリス・ルクランシェが買い(再現サイトによれば500フラン)、1906年に画商ヴォラールを経てモスクワの収集家セルゲイ・シチューキンが取得した。1918年の国有化後は国立新西洋美術館に入り、1948年にプーシキン美術館へ移った。
意義
再現サイトによれば、ゴーギャンは1892年8月にモンフレッドへの手紙で「近ごろ、二人の女が浜辺にいる見事な裸婦を描いた。これまでに描いたなかで最良のものだと思う」と書いた。シチューキンは邸宅の一室にゴーギャンの作品を壁一面に並べ、その「ゴーギャンのイコノスタシス」の二段目に、本作を《果実の収穫》と並べて掛けた。同サイトはゴーギャンを、芸術的な経験と精神的な経験を一つにしようとする総合主義を唱えた画家と紹介している。