《陽気な酒飲み》
- 作者
- フランス・ハルス
- 制作年
- 1628–1630年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 81 × 66.5 cm
- 所蔵
- アムステルダム国立美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
黄色い革の上着を着た男が、ワイングラスを手に、もう一方の手を上げてこちらに笑いかける。口を少し開け、今にも乾杯を促しそうだ。つばの広い黒い帽子と白い襟、胸のメダルが、素早い筆で描かれている。
概要
《陽気な酒飲み》(蘭: Een schutter die een berkenmeier vasthoudt, bekend als ‘De vrolijke drinker’)は、フランス・ハルスが1628年から1630年頃に描いた油彩画である。縦81センチ、横66.5センチ。アムステルダム国立美術館が所蔵する。館の題は「ベルケマイヤーを持つ市民隊員、通称〈陽気な酒飲み〉」で、ベルケマイヤーと呼ばれるワイングラスを手に、見る者へ乾杯しようとする男を描く。ハールレムで活動したオランダ黄金時代の絵画の画家ハルスの、素早く大胆な筆づかいをよく示す作品である。
画面の読み解き
明るい灰色の背景の前で、黄色い革の上着を着た男が体を斜めに向け、顔をこちらに向ける。つばの広い黒い帽子をかぶり、赤らんだ頬で口を少し開けて笑う。右手は開いて持ち上げ、左手には淡い色のワインが入った大きなグラスを持つ。所蔵館によれば、男はいまにもグラスを掲げて、私たちと乾杯しようとしている。首もとには白い襟が広がり、胸には鎖につるした金色のメダルが下がる。所蔵館によれば、右寄りの中ほどに、FとHを組み合わせた画家の署名がある。
技法・様式
所蔵館によれば、筆の跡が画面の上で交差し、すばやく描き上げたような印象を与えて、画面全体に動きを生んでいる。袖口や袖、メダルはぼやけて、仕上げられていないようにさえ見え、口ひげの何本かは絵具を引っかいて描かれている。所蔵館の目録(ヨナタン・ビッカー執筆、2007年)によれば、手と上着は茶色で、襟は灰色で下塗りされている。所蔵館は本作を、ハルスの大胆で「荒い」描き方の典型としている。
来歴
所蔵館によれば、1816年7月31日、ワルモント城で行われたヘルミナ・ヤコバ・ファン・レイデン・ファン・ワルモント男爵夫人の遺品の売り立て(13番)で、画商デ・フリースを通じて325ギルダーで買い入れられた。所蔵番号SK-A-135。館の名誉の間に展示されている。2024年にアムステルダム国立美術館で開かれた展覧会「フランス・ハルス」でも、主要作の一つとして紹介された。
意義
男が着ているのは、市民隊員や軍人の身なりである黄色いバフ・コート(革の上着)で、所蔵館によれば、胸のメダルにはオラニエ公マウリッツの肖像が描かれている可能性がある。目録によれば、こうしたメダルは、1622年のハッセルト、1625年のヒュースデンへの遠征など、特別な働きをした市民隊員に与えられた。一人の人物を描いた風俗画なのか、肖像画なのかは議論されてきたが、所蔵館は、軍の身なりと、ハルスのほかの肖像画にもみられる身ぶりから、肖像画とみる見方を示している。笑いと動きを一瞬でとらえた本作は、笑う人を描くことに長けたハルスの代表作である。