《ウフィツィ美術館のトリブーナ》
- 作者
- ヨハン・ゾファニー
- 制作年
- 1772–1777年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 123.5 × 155 cm
- 所蔵
- ロイヤル・コレクション (RCIN 406983)
- 時代
- バロック・ロココ
赤い壁に絵画がぎっしり掛かる八角形の部屋。古代の彫刻が並ぶ床で、着飾ったイギリスの紳士たちがいくつもの輪をつくり、ティツィアーノの裸のヴィーナスやラファエロの聖母に見入る。右手前には赤い勲章の綬を掛けた外交官が立つ。
概要
《ウフィツィ美術館のトリブーナ》は、ドイツ出身の画家ヨハン・ゾファニーが1772年から1777年に描いた油彩画である。英国王室のロイヤル・コレクションが所蔵する。所蔵館によれば、1772年の夏、ゾファニーは300ポンドと紹介状、そしてシャーロット王妃の注文を携えてフィレンツェに向かった。注文は、トスカーナ大公の収集の名品を、ウフィツィ美術館のトリブーナの部屋に並ぶ姿で描くことだった。トリブーナは、1585年から1589年にベルナルド・ブオンタレンティがメディチ家の名品を飾るために設けた、丸天井のある八角形の部屋である。
画面の読み解き
所蔵館によれば、壁には絵がすき間なく掛かり、壁ぎわに彫刻が並ぶ。英国の旅行者たちがいくつかの輪になって作品を眺め、右手前にはバス勲章の綬と星章をつけた外交官ホレース・マンがいる。ラファエロの洗礼者ヨハネが天を指し、ボローニャ派のアンニーバレ・カラッチやグイド・レーニ、ルーベンスが伝統を引き継ぐ。画面は、描かれたティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》と古代彫刻《メディチのヴィーナス》のどちらが美しいかを比べさせる。右端の画架とパレット、中央の金槌と釘だけが、芸術の労働を物語る。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、壁の絵の一枚一枚は画中画として、それぞれの巨匠の画風をまねて描き分けられ、互いの関係が見てとれるように並べられている。同時代の素描と比べると部屋の配置はおおむね正確だが、ゾファニーは室内の遠近法を調整し、ピッティ宮殿などほかの場所の作品も描き入れた。幾何学的に正しく描けば四つの彫刻群のうち二つしか入らず、手前の人や物はもっと大きく見えるはずだが、舞台を客席から眺めるような視点をとって多くを詰め込んだ。パニーニの百科事典的な絵のように、すべてが前へ押し出され、宝石箱を一つずつ開けて探るような効果を生んでいる。
来歴
所蔵館によれば、作業は遅々として進まず、モデルの一人ウィンチルシー卿は「見たこともないほど骨の折れる仕事」と書いた。作品は1777年に完成し、1778年にロンドンへ運ばれ、1780年にロイヤル・アカデミーで展示された。だが、無名のイギリス人旅行者の肖像を数多く描き込んだことは不適切とされ、国王は驚きを口にし、王妃は自分の部屋に掛けることを許さなかった。ゾファニーは二度と王室の仕事をしていない。所蔵番号はRCIN 406983。
意義
日本語版ウィキペディアによれば、本作は18世紀の趣味を示す最も称賛されたイメージの一つで、グランド・ツアーに欠かせない名所だった展示室で、目利きや貴族が美術を称える姿を描いている。所蔵館は、ゾファニーが一つのまとまった筋書きよりも、無数の会話の種を示すことに関心を寄せたとしている。