《カバとワニ狩り》
- 作者
- ピーテル・パウル・ルーベンス
- 制作年
- 1616年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 248.3 × 321.3 cm
- 所蔵
- アルテ・ピナコテーク
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- バロック
ナイルの岸辺で、口を大きく開けたカバがワニを踏みつけ、ターバンの男たちが馬上から槍を突き立てる。白い猟犬がカバに食らいつき、手前では倒れた男たちが獣の下でもがく。
概要
《カバとワニ狩り》は、フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスが1616年頃に描いた油彩画で、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが所蔵する。バイエルン州立絵画コレクションの目録では、キャンバスに油彩で、縦248.3センチ、横321.3センチ。所蔵番号は4797で、選帝侯の絵画館に由来し、館の上階のVII室に展示されている。額は18世紀にヨーゼフ・エフナーがつくったものである。館によれば、本作はバイエルン選帝侯マクシミリアン1世が、シュライスハイムの旧城のためにルーベンスに注文した、もとは4点からなる狩猟画の連作の一つである。
画面の読み解き
画面の中央では、口を大きく開けたカバが後脚で立ち上がり、腹の下のワニを踏みつける。そのまわりを、ターバンを巻いた3人の男が馬で取り囲み、上から槍を突き立てる。左の白い猟犬がカバに食らいつき、手前では剣を握った男が身を起こそうとし、もう一人の男が倒れ伏している。右奥にはヤシの木と低い地平線が広がる。日本語版ウィキペディアによれば、狩人は東洋風の衣装の騎馬の男3人と、剣と弓矢で戦う従者2人からなり、ヤシの木は舞台がナイル川のエジプトであることを示している。また、当時カバやワニは危険な害獣とみなされ、その駆除は貴族の務めでもあったという。
技法・様式
館の解説によれば、ルーベンスがこの主題を思いついたのは、おそらく古代美術を学んだことがきっかけで、すでに古代から劇的な狩りの図は大いに好まれていた。カバの写実的な描写は、1601年にローマで展示された標本にもとづくとみられる。日本語版ウィキペディアは、カバとワニの正確な姿を、バロック期に高まった経験主義と博物学への関心の表れとし、ルーベンスが工房とともにこの大作の連作を描いたと記す。同じ記事は、狩猟画をルーベンスの作品でもとりわけ躍動的なものとし、複雑な人物の群れ、騒然とした動き、暴力的な場面とドラマ、鮮やかな色彩を、その様式の特徴として挙げる。
来歴
館によれば、4点の連作はナポレオンの軍隊に接収され、本作だけがミュンヘンに戻った。日本語版ウィキペディアによれば、連作は《カバとワニ狩り》《ライオン狩り》《虎狩り》《猪狩り》の4点で、ほかの3点はフランスのボルドー、レンヌ、マルセイユの美術館に送られた。目録は本作の入手を「選帝侯のギャラリーから」とし、ヴィッテルスバッハ家の収集を受け継ぐアルテ・ピナコテークの所蔵となっている。
意義
日本語版ウィキペディアによれば、ルーベンスとその工房は1610年代から1620年代にかけて、貴族の注文主のために多くの大きな狩猟画を描き、本作はその早い時期の大作にあたる。19世紀フランスの画家ウジェーヌ・ドラクロワは、画面のワニを制作の傑作と称えつつ、その動きはもっと面白くできたかもしれないとも書いた。同じ記事によれば、本作はピーテル・サウトマンらの版画で広まり、17世紀の画家ヒエロニムス・フランケン2世は、美術愛好家の部屋を描いた絵に本作を画中画として描き込んだ。