《ロクノーのレディ・アグニュー》
- 作者
- ジョン・シンガー・サージェント
- 制作年
- 1892年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 127 × 101 cm
- 所蔵
- スコットランド国立美術館
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
青い絹の壁掛けを背に、花柄の肘掛け椅子に女性がもたれて座る。白いドレスの腰に藤色の帯を締め、胸もとには大きなペンダントが光る。わずかに首をかしげ、まっすぐこちらを見つめている。
概要
《ロクノーのレディ・アグニュー》(英: Lady Agnew of Lochnaw)は、ジョン・シンガー・サージェントが1892年に描いた油彩画である。縦127センチ、横101センチ。エディンバラのスコットランド国立美術館が所蔵する。フリック・コレクションの解説によれば、社交界の美女として知られたレディ・アグニュー(旧姓ガートルード・ヴァーノン)の肖像画で、夫でスコットランドの法廷弁護士だったアンドリュー・ノエル・アグニュー卿が注文した。1893年のロイヤル・アカデミー展で絶賛され、サージェントのイギリスでの地位を固めた作品である。
画面の読み解き
夫人は18世紀フランスの肘掛け椅子に、背をあずけるようにくつろいで座る。椅子の張り地は赤や青の花柄で、背後には中国の青い絹の壁掛けが下がり、金色の文様と花の模様が散る。白いドレスの袖は透ける薄布でふくらみ、腰には藤色の帯が締められて、膝の上から床へと流れ落ちる。胸もとには長い鎖の先に大きなペンダントが下がり、手首には金の腕輪が光る。フリック・コレクションは、正面からまっすぐ向けられた視線とくだけたポーズによって、モデルが見る者と強く結びつくと述べる。左上の隅には画家の署名がある。
技法・様式
テートの展覧会ガイドによれば、サージェントはロンドンの夫人の家を訪ねて肖像の相談をし、何着ものドレスを検討したうえで、薄いオーガンジーの袖と藤色の飾りのついた白い絹のドレスを選んだ。制作は速く、わずか6回の写生で仕上げている。藤色の帯や、膝の上の布の明暗は、長い斜めの筆の運びで描かれた。フリック・コレクションは、椅子の張り地と中国の絹の壁掛けの色と模様が白いドレスと調和し、流れるような筆づかいが豊かさとくつろぎを伝えると解説する。画家はのちに、ごく少ない回数の写生でかえって最良の結果を得ることがあると語った。
来歴
日本語版ウィキペディアによれば、夫人は1889年にロクノー城の主アンドリュー・アグニューと結婚し、夫は1892年に準男爵を継いだ年にこの肖像を注文した。作品は1925年、カウアン・スミス遺贈基金の援助でスコットランド国立美術館が購入した。それまでの題は単に「レディ・アグニュー」だったが、夫人の求めで現在の題に改められたという。所蔵番号はNG 1656。2014年から2015年にはニューヨークのフリック・コレクションなどを巡回し、2024年にはロンドンのテート・ブリテンの「サージェントとファッション」展に出品された。
意義
フリック・コレクションによれば、1893年のロイヤル・アカデミー展で寄せられた賞賛は、レディ・アグニューを社交界の女主人に押し上げると同時に、サージェントを大西洋の両岸で最も人気のある肖像画家にした。テートは、本作の成功がイギリスでの画家の地位を確かなものにし、まもなくロイヤル・アカデミーの会員に選ばれたと述べている。