《バーラト・マーター》
- 作者
- アバニンドラナート・タゴール
- 制作年
- 1905年
- 素材
- 紙 / 水彩
- 寸法
- 26.7 × 15.2 cm
- 所蔵
- ヴィクトリア・メモリアル
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
黄色い光に包まれた野に、サフラン色の衣をまとった女性がひとり裸足で立つ。4本の腕に白い布と書物、数珠と稲穂を持ち、頭の後ろには丸い光輪が淡く輝く。足もとには白い蓮の花が並ぶ。
概要
《バーラト・マーター》は、インドの画家アバニンドラナート・タゴールが1905年に描いた水彩画で、コルカタのヴィクトリア・メモリアルが所蔵する。館が Google Arts & Culture に寄せた記録では、縦10.5インチ(約26.7センチ)、横6インチ(約15.2センチ)の小さな作品である。題は「母なるインド」を意味し、インドを一人の女性の姿で表した寓意画である。館は、ベンガル派の礎を築いた画家の代表作の一つに本作を挙げる。
画面の読み解き
美術史の教育サイト「スマートヒストリー」の解説によれば、光に満ちた風景のなかに、サフラン色の衣をまとった女性がひとり立ち、大地と空が溶け合っている。女性には4本の腕があり、頭の後ろには二重の光輪、足もとまで光がおよび、足もとには蓮の花が咲く。4本の手が持つのは、稲穂(食)、布(衣)、写本(知識)、数珠(信仰)で、健やかな国の未来の礎を表す。光輪は初期の仏教美術や17世紀のムガル絵画の神聖な王の表現に、多くの腕はドゥルガー女神の古い図像に、蓮はサーンチーなどの仏教の遺跡に通じる。
技法・様式
同じ解説によれば、タゴールの「ウォッシュ技法」は、色をゆるやかににじませて、色と気分を重んじる描き方で、汎アジア主義への関心と、ムガルの写本や日本の水墨画の研究から生まれた。ベンガル派の様式は、イギリスの美術学校の厳格な線と遠近法に代わり、平らな画面と溶け合う色を好んだ。ヴィシュヴァ・バーラティ大学の画家紹介によれば、画家は20世紀の初めに岡倉天心と出会い、1903年に帰国した岡倉が送った弟子の横山大観と菱田春草とも交流して、大観から筆を軽く扱うことを学んだ。
来歴
スマートヒストリーによれば、本作はイギリスの支配に抵抗するスワデーシー(国産品愛用)運動の高まりのなかで描かれ、画家は、抵抗への支持を集めるのに役立つことを意識していた。画家ははじめ《バンガ・マーター(母なるベンガル)》と題し、ふつうのベンガルの女性、一説には自分の娘をモデルにしたが、絵はまもなく「母なるインド」と見なされるようになった。ほかの画家たちが写し、スワデーシー運動の募金のポスターや各地の言葉の雑誌にも転載され、1906年には地元の雑誌が「祖国の精神」の題で載せた。
意義
ヴィクトリア・メモリアルは、ラビンドラ・バーラティ協会の収集と合わせて開いたアバニンドラナート・タゴール展で、本作を《シャー・ジャハーンの死》とともに画家の象徴的な作品として紹介した。バングラデシュの国民百科事典『バングラペディア』も、《追放されたヤクシャ》《シャー・ジャハーンの死》と並ぶ、画家の最も優れた作品の一つに本作を挙げている。