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《あらわにされた美》

Beauty Revealed
《あらわにされた美》サラ・グッドリッジ
Wikimedia Commons / メトロポリタン美術館 / CC0 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
サラ・グッドリッジ
制作年
1828年
素材
象牙 / 水彩絵具
寸法
6.7 × 8 cm

手のひらに収まる象牙の板に、白い布に包まれた胸だけが描かれている。顔も名も記されていない。1828年、ボストンの細密画家サラ・グッドリッジが、妻を亡くしたばかりの政治家ダニエル・ウェブスターに贈った一点である。

概要

《あらわにされた美》(原題: Beauty Revealed)は、サラ・グッドリッジが1828年に象牙の薄板へ水彩で描いた肖像細密画である。縦6.7センチ、横8センチ。ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する。画家が自らの胸だけを描いた自画像で、最初の妻を亡くしたばかりの政治家ダニエル・ウェブスターに贈られた。

画面の読み解き

白い布がゆるく巻き上がり、そのあいだから胸があらわれる。顔も手も描かれず、鎖骨から下だけが画面に収まる。背景は灰色に沈み、布の白と肌の明るさだけが浮かび上がる。向かって左の胸の上には小さなほくろが置かれ、これが不特定の裸体ではなく特定の身体であることを示している。象牙の地の白さを透かして肌が塗られ、細い筆の点と線を重ねて陰影がつくられている。作品は蓋の閉じる革のケースに収められており、開いて初めて見えるようになっている。

技法・様式

19世紀前半のアメリカでは、象牙の薄板に水彩で描く小さな肖像が広く注文されていた。持ち運べる私的な肖像であり、恋人や家族のあいだで贈り合われた形式である。グッドリッジはその技法と体裁をそのまま用いながら、収まるべき顔の代わりに胸を置いた。形式が私的であることを前提にしているからこそ成り立つ作りだといえる。

来歴

グッドリッジとウェブスターの関わりは1827年に始まり、画家は政治家とその家族の肖像を繰り返し手がけている。1828年1月にウェブスターの最初の妻グレース・フレッチャーが没し、同じ年にグッドリッジはワシントンへ彼を訪ねた。本作はその年の制作である。ウェブスターは1829年に別の女性と再婚したが、この細密画は終生手もとに置いた。作品は子孫に伝わり、1981年6月26日のクリスティーズの競売で15,000ドルで売られ、グロリアとリチャードのマニー夫妻の収集に入る。1991年の巡回展『愛情のしるし——アメリカの肖像細密画』で初めて公に展示され、2006年にグロリア・マニーからメトロポリタン美術館へ寄贈された。所蔵番号2006.235.74。

意義

19世紀前半のアメリカで、女性の画家が自らの身体を、自らの手で、贈り物として描いた例はほとんど知られていない。婚約の申し出と読む見方と、画家としての自負のあらわれと読む見方の双方があり、決着はついていない。注文でも展示でもなく、ただ一人に宛てて作られた点に、この小さな板の特異さがある。公の場に出たのは、制作から160年以上のちのことだった。